謹 製

ヘッドフォンアンプ





・またヘッドフォンアンプを作ってみる。今回はお遣いものである。

・自分で使うのであればインピーダンス300ΩのHD600をベースに考えれば良いわけだが、お遣いものとなればもっと低インピーダンスのヘッドフォンが使われることを想定しなければならない。まぁ、普通に30Ω、場合によってはそれ以下のインピーダンスのヘッドフォンがつながれることを想定する必要がある。

・となると、最近作った自家用ヘッドフォンアンプのような1段差動ベースではゲイン不足の感なきにしもあらず。なので、2段差動アンプで考えるべきか。

と、色々と考えてこういう回路である。

・折角2段差動アンプを採用するのであれば、その特徴、能力を最大限発揮させるものにしたい。から、2段目にはカスコード回路とウィルソン型カレントミラーを付加して2段目のgmをフルに使い、そのPP出力を終段プッシュプルダーリントンエミッタフォロアに引き渡す。

・で、結局は、まぁ、ごく普通の回路。(爆) K式GOA最終形の回路そのもののようにも見える。が、GOA抵抗は付けていないのでそもそもGOAとは言えない。し、初段の動作点が2.8mAと大きく、その分ドレイン抵抗が小さいなどの違いもある。どちらかといえばLH0032に近いか。

・なお、2段目差動アンプ左側にも20pFの位相補正Cを付けてある。いにしえのGOAの場合はここに右側の半分のCを付けるものだった。が、今回、慎重にヒヤリングした結果、この場合は右側の倍のCを付けるのが音的に良い。ということを発見したのである。

・と、言うのは嘘で(^^;、この20pFがないと10MHz以上の高域でオープンゲインの減衰カーブが緩やかになってNFB的に不安定方向になるのだが、それをこの20pFのCで防げる。と、LTSpiceが占うのでこうしたもの。

・初段の動作点は2.8mA。なのでその裸のgmは規格表から2.8mS。オフセット調整用の抵抗によって電流帰還が掛かるので、初段のgm1=2.8/(1+2.8*0.1)≒2.2mS。初段の負荷はドレイン抵抗560Ωと2段目の入力抵抗の並列合成値Raだが、2段目動作点が5.3mAなのでそのgm2≒40×5.3=212mS、そのhfeを300としてhie=300/212≒1.4kΩ。なので並列合成値Ra=400Ω。従って、初段のゲインA1は、2.2mS×0.4kΩ=0.88倍(△1.11dB)。差動アンプなので本来その1/2だが、2段目でPP合成され2倍になるのでこのままにする。

・2段目のゲインは2段目のgm2(=212mS)×その負荷抵抗値だが、2段目の負荷は、低域では、2段目カスコードアンプの出力抵抗とウィルソン型カレントミラーの出力抵抗、そして終段ダーリントンエミッタフォロアの入力抵抗の並列合成値Rb。ダーリントンエミッタフォロアの入力抵抗はダーリントン前後段TRのhfeを各100として無負荷時は(6.8k+0.68k)×100×100≒75MΩ、ウィルソン型カレントミラーの出力抵抗は電流帰還が掛かってエミッタ接地の場合の出力抵抗×hfe/2程度らしいので、2SC2240の規格表からエミッタ接地の場合の出力抵抗をまぁ30kΩ、BLランクなのでhfe=500として、30kΩ*500/2=7.5MΩ。カスコード回路の2SA970の出力抵抗の計算はまともに考えると難かしそうなので、下左図の回路でLTSpiceで占ってみると下右図のとおりで、その出力抵抗は4.4MΩ。なのでRb=2.67MΩ。したがって2段目のゲインA2は、低域で212mS×2.67MΩ=566,040倍≒115dB。

・そして終段の電圧ゲインは1倍なので、結果オープンゲインは低域でA1×A2=0.88×566,040=498,115倍≒114dB。
・高域については、2段目のB−C間の位相補正Cによるミラー効果で、その電圧ゲインはA2/(1+2πf(1+A2)CRa)になるので、オープンゲインはA1*A2/(1+2πf(1+A2)CRa)。この場合A2が大きく、fも大きく(要するに周波数が高く)なるほどにA1*A2/(1+2πf(1+A2)CRa)≒A1/2πfCRaとなり、さらにA1=gm1*Raなので、結局高域のオープンゲイン=gm1/2πfCである。すなわち、高域のオープンゲインは、初段のgm1×2段目位相補正Cのインピーダンス のみで決まる。だからここの位相補正コンデンサーには出来るだけ良いものを使いたい。ということになる。

・で、高域のオープンゲインはgm1/2πfCで計算しても、今回の回路ではA2が概算566,040倍もあるので1kHz以上では殆ど誤差はない。が、エクセルが簡単に計算してくれるのでA1*A2/(1+2πf(1+A2)CRa)で計算してみると、1Hzで114dB、10Hzで113dB、100Hzで106dB、1kHzで90dB、10kHzで71dB、100kHzで51dB、1MHzで31dB、10MHzで11dB、100MHzで−9dBとなる。 

・利得交点周波数は当然1kHz以上であることが想定されるのでA=gm1/2πfCで計算してA=1/βになる周波数なので、そのf=gm1*β/2πc=0.0022*0.091/(6.28*0.00000000001)≒3.19MHzとなる。私のような素人にはこれが3MHz以下であることが望ましい。と言われているのでちょっと高いのだが、まぁこの程度ならいいか。(^^; なので、位相補正C=10pFも初段のgm1の設定もこれでいく。

・で、そうするとスルーレートは5.6mA/10pF=560V/uSが見込めることになる。と言っても、別にスルーレートが大きいと音が良いと言っている訳ではない。(爆)

・と、概略計算されるのだが、どうか。LTSpiceで占ってみる。

・そのオープンゲイン(赤)は100Hz以上については殆ど計算どおりである。最低域は計算よりやや少なく110dBという占い結果。だが、まぁこんなものだろう。
・インピーダンスの低いヘッドフォンアンプが負荷になった場合にはどうなるのか。は、当然計算すれば出る。が、面倒なので、LTSpiceでアンプの負荷を3Ω、30Ω、300Ω、3kΩ、30kΩとパラメトリックに変化させた場合のゲイン&位相−周波数特性を観る。
・オープンゲイン(赤)は下から負荷3Ω、30Ω、300Ω、3kΩ、30kΩの場合で、3kΩ、30kΩの場合のオープンゲインは殆ど重なっている。

・で、負荷3Ωでも低域で72dBのオープンゲインがある。終段の電流供給能力さえ十分ならばスピーカーも鳴らせると思われる結果だ。から、ヘッドフォン用としては十二分だろう。

・また、ループゲイン(青)で明らかだが、負荷のインピーダンスの低下はNFB的により安定方向に働く。

・ので、これで良いのではないだろうか。(^^)
   
・と言うわけで、実機を組んでみる。

・位相補正コンデンサーには出来るだけ良いものを使いたい。ということでSEコン。
・その回路はこう。

・要するにシミュレートした回路に同じである。
   
・で、早速その動作が適切かどうかを方形波応答で確認する。

・上から10kHz、100kHz、500kHz、1MHzの方形波応答で、左はLTSpiceの占い波形、右が実機の応答波形。

・入力は1Vp−pであり、どの写真も下の波形が入力波形、上の波形が出力波形。
10kHz 10kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
100kHz 100kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
500kHz 500kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
1MHz 1MHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
・実機の方形波の立ち上がり、立ち下がりがLTSpiceが示すものより遅いのは、そもそも発振器の出力自体がなまくらであるため。が、結論的には全く問題のない方形波応答である。
   
・また、スルーレートは5.6mA/10pF=560V/uSが見込める。はずだが、それを100kHz方形波を過大入力した場合の立ち上がりの応答を時間軸拡大して計ってみる。

・と、う〜ん。まず立ち上がるまで60nSほど掛かっているし、傾きも80nSで24Vなのでスルーレートは300V/uSといったところ。立ち上がるまでの時間を勘案すればもっと遅いものになるが。

・まぁ、2段目差動アンプ周りのCob等もろもろの寄生容量が効くのか、差動1段+フォールデットカスコードの場合のようには行かないようだ。(爆)

・なお、実機の方はこのレベルになると計るすべがないので不明。
   
・さらに、参考までに1kHz正弦波入力に対する出力正弦波のFFTを占っておく。負荷は他のヘッドフォンアンプと同条件にするため、まずは300Ωである。
・最初は入力±1Vp−p。すなわち出力は±11Vp−p。

・高調波は2次が−120dB以下、3次で−120dB程度と最近作ったヘッドフォンアンプに比べるとレベルは40dBも少ない。2段目差動アンプというgmエンジンのおかげでオープンゲインが他のヘッドフォンアンプに比べて40dB程度増加し、結果NFBも40dB程度多いので、当然と言えば当然の結果だ。

・したがって、歪率としては0.0001%程度になるはずだが、LTSpiceの占い結果は

Total Harmonic Distortion: 0.000161%。
・次に、入力を±0.1286Vp−p、すなわち出力を±1.414Vp−p(1Vr.m.s.)にした場合。

・2次高調波が−140dB以下、3次高調波が−150dB程度とこちらも他のヘッドフォンアンプに比べると40dB程度少ない。

・したがって、歪率は

Total Harmonic Distortion: 0.000008%。
・次に入力±0.1286Vp−p、出力±1.414Vp−p(1Vr.m.s.)で、負荷が30Ωの場合。

・この場合でも、2次高調波が−110dB程度、3次高調波が−100dB強で、歪率も

Total Harmonic Distortion: 0.001355%。

・と、非常に良好だ。(^^)
・もとより、このヘッドフォンアンプはごく普通の低インピーダンスヘッドフォンがつながれることを想定したものであるから、こうなってもらわないと困る。(^^; 訳なのだが、この際、次に入力を±1Vp−p、すなわち出力を±11Vp−pの大出力とし、かつ負荷が30Ωの場合のFFTを観る。
・さすがに高調波のオンパレードになった。ように見えるが、レベル的には最大の2次高調波でも−100dB強であり、従って歪率も

Total Harmonic Distortion: 0.001845%。

・と、±1.414Vp−p(1Vr.m.s.)出力の場合と殆ど変わらない歪率である。

・“謹製”に相応しい。かな。(^^)

   
・次に、このタイプ、すなわち2段差動アンプ+エミッタフォロアの場合、出力にぶら下がる容量負荷に弱いという件である。

・自家用なら実際に使う環境で問題がなければよいのであまり気にしないが、お遣いものとしては気にせざるを得ない。

・ので、負荷300Ωにパラで10pF、100pF、1000pFの容量がぶら下がった場合のゲイン&位相−周波数特性をLTSpiceでパラメトリックに占う。
・結果がこう。

・やはり10MHz以上の領域でオープンゲイン(緑)もループゲイン(青)もクローズドゲイン(緑)もしゃくれあがっている。しゃくれの度合いは大きい順にパラ容量が1000pF、100pF、10pFの場合である。

・やはり、あまり芳しい結果ではない。が、パラ容量が100pF程度までなら目くじらを立てるほどでもない。と言えるかもしれない。
・この問題への対策は周知のごとくアンプ出力にシリーズに小抵抗を入れることである。

・ラインアンプなら100Ωぐらいを入れれば良いのだが、ヘッドフォンアンプとしてはそれでは大きすぎる気がするので、色々とその抵抗値を変えて試してみると、勿論抵抗値は大きいほど効果があるが、この場合最低限10Ωを入れればそれ以上の抵抗値の場合と遜色のない効果が得られるようだ。
・それがこれである。
・ので、まぁ、お遣いものとしては安全第一だし、10Ω程度の抵抗なら仕方がないかなぁ、入れても。。。と思ったり、一方、この抵抗はNFBループ外だし、したがって出力インピーダンスは完全に10Ω増しになるので、ラインアンプならまだしも、インピーダンスが30Ωとかのヘッドフォンが繋がるヘッドフォンアンプとしてはどうかなぁ。音悪くなりそう。。。とも思う。

・と、優柔不断。
・と、思い悩むうちに、この辺1MHzを超える領域になるとシミュレーターの占いと実機の現実の世界とのかい離が大きくなることに注意しないといけない。ということを思い出した。シミュレーションでは考慮していない現実世界の基板パターンや配線のインダクタンス、容量等が効いてきて、現実はシミュレーション結果より悪い状況になる。と考えるのが妥当だ。

・ので、実機で実際に容量を負荷とした場合の方形波応答で1MHz以上の領域の状況を観じて判断しよう。
・と言うわけで100kHzと1MHzの方形波応答を観る。

・先ずはアンプ負荷、1,000pF。入力は1Vp−pで、下が入力波形、上が出力波形。

・結果、リンギングだ。

・やはり、実機の1MHz以上での位相回転はシミュレーターが占うものよりずっと早くなるようだ。危うい、危うい。(^^;

・が、発振には至っていないし、1000pF容量負荷でこのリンギングなら許容範囲かもしれない。
100kHz 負荷1000pF 下:0.5V/div 上:5V/div 1MHz 負荷1000pF 下:0.5V/div 上:5V/div
・が、1000pFの容量負荷では発振に至らなかったので、より少ない容量の場合は問題ないだろうと思ったものの、念のため容量負荷を300pFにしてみたら。。。

・発振だ!

・。。。。。。。。。
100kHz 負荷300pF 下:0.5V/div 上:5V/div 1MHz 負荷300pF 下:0.5V/div 上:5V/div
・で、このような発振状態で悠長にオシロでその様子を眺めていてはいけない。終段が熱暴走を起こして壊れる可能性がある。

・ので、早々に電源を切る。
・やはり対策は必須かな。

・ということで、出力にシリーズに10Ωを繋いだ場合はどうだろう。

・まずは、10Ωがないと発振してしまう300pFの容量負荷ではどうか。
・10Ωが効いて安定状態に戻った。

・が、1MHz方形波応答を観るとわずかながら波形にでこぼこがある。ので、MHz領域のクローズドゲインの減衰のどこかにまだピークがあることが分かる。

・要するに10Ωでは対策としてはまだ完全ではない。ので、容量負荷を1000pFにしたら状況はさらに悪化する可能性がある。
100kHz シリーズ10Ω 負荷300pF
下:0.5V/div 上:5V/div
1MHz シリーズ10Ω 負荷300pF
下:0.5V/div 上:5V/div
・で、今度は容量負荷1,000pFの場合。

・やはり多少のリンギングが明確に生じている。
100kHz シリーズ10Ω 負荷1,000pF
下:0.5V/div 上:5V/div
1MHz シリーズ10Ω 負荷1,000pF
下:0.5V/div 上:5V/div
・ので、さらなる安全を目指せば10Ωをもっと増やすなり、そもそもの位相補正Cを増やすなりの対策を講じなければならない。

・が、最悪の想定もその対策も厳密にはきりがない。どこかで妥協する必要がある。

・ので、1,000pFの容量負荷でこのリンギングなら妥協することにした。
・まぁ、これを観ても自家用であれば10Ωのシリーズ抵抗も入れないで使う。と、判断するところだ。が、お遣いものとしてはそうも言えないし、お遣いものと考えれば出力短絡の場合を想定した保護回路も考えるべきで、出力にシリーズに抵抗を入れることはその保護回路にもなる。ので、結論としては、出力に10Ωの抵抗をシリーズに入れよう。
   
・そして次に、DCオフセットとドリフトである。

・このヘッドフォンアンプも初段FETに2.8mAも流し、そのソース−ドレイン間電圧は20V近いので、その損失は60mW近くになる。先に作ったCDラインアンプ兼ヘッドフォンアンプに同じだ。この間に私のFETのペア選別能力が上がったということはありえないので、このヘッドフォンアンプもパッシブDCサーボ導入前のCDラインアンプ兼ヘッドフォンアンプ並のDCオフセットとドリフトが発生する可能性が高い。

・と思っていたのだが、正にそのとおりだった。(爆)(^^;

・が、今回はCDラインアンプではなく、このアンプの後に別のアンプが繋がることはないし、数10mV程度のDC漏れでヘッドフォンが壊れることはない。ので、
今回はパッシブDCサーボは入れない。

・それにしても、シングルFETの素朴な熱結合でDCオフセットとドリフトを低く抑えるのはなかなかに難しいものである。DCサーボの助けを借りずにこれを±1mV以内などに収めるためには、
デュアルFETを起用し、その動作点をいわゆるQポイントに置き、さらにカスコード回路でそのドレイン−ソース間電圧を下げて損失も極小にするなど、かつてのK式GOAで採用されていた手法を総動員する必要があるのかもしれない。で、先ずはデュアルFETを使いたいところだが、今となってはデュアルFETなどこの世から消えてしまっている。。。
   
・といったところで、そろそろ検討を終了とし、基板をケースに収める。

・ケースはタカチ電機工業のOS49−23−16SS。
・全体回路図はこう。

・アンプ部は、入力に東京コスモス電機のRV30YG50kΩA型を入れ、出力に10Ωを加えてある。

・電源部は、トランスに東栄変成器の小型電源トランスを使い、31DF2でブリッジ整流しただけの回路である。電源スイッチには日本開閉器工業の超高輝度LED内蔵型照光式トグルスイッチを使ってみた。光るレバーがなかなかにシック。かな。(^^;

・で、その音。

・出力に10Ωのシリーズ抵抗を入れたこともありどうかと思ったのだが、あまりその影響は感じない。NFB量が最近作った他のヘッドフォンアンプより多いが、それによる特段の違いを感じるところもない。が、敢えて言えば一層滑らかで清らか。とても良い音だわぃ。(^^)
   
・ところで、この際、安くて音の良いヘッドフォンはないか?という捜索依頼があった。

・安いと言っても人によって想定する金額が異なるのだがどうも1万円程度らしい。ので、ある日某家電量販店に出かけてみた。

・が、専用のアンプがあてがわれている高級品と違い、このレベルだと音は聴けるものの多数パラで鳴らされているようで、ソースのクオリティも悪く音量もばらばらで、判別は困難を極める。

・のだが、なんとか2機種を選んでみた。DENONのAH-D1000とaudio-technicaのATH−A900。多少1万円をオーバーするが買うところで買えばどちらも1万円ちょっと。
・で、そもそも本命として選んだのはAH−D1000である。その音は他の大方のヘッドフォンのようにエッジを効かせてハイファイ感を出すような高域のしゃくれ感(しゃりしゃり感、刺激感)がなく、しかも低域が豊かなので、比較すると柔らかいと感じる音なのだが、実はこのAH−D1000の方が低域から高域まで自然なバランスで、他がちょい聴き良い音に感じるように作られているようだ。DENONのヘッドフォンは最高級のAH−D7000から価格がその1/10のこのAH−D1000まで音が良く似ており、このAH−D1000も最高級のAH−D7000の音に通じる良さをもっている。その意味ではコストパフォーマンスも高い。

audio-technicaのATH−A900は、そのエッジを効かせてハイファイ感を出す方のタイプだが、開放型のように音が拡散して散漫になるところがなく、芯のある充実した音が密閉型の特徴を良く出しているので選んでみた。のだが、新品で鳴らしてみたら家電量販店で聴いた音と違って刺すようなとげとげしさで大きさの割に低音も出ず、ブリキ板が鳴っているような音で驚いてしまった。が、我慢して聴いているうちにあっという間にこなれて低音から高音までスムーズに出るようになってウェルバランスになってきた。ので再度驚いた。が、そうなってもやはり性格的にはややハイあがり。それで爽快さや繊細感が強調される。が、エージングのしがいがあるタイプのようなので、使い込むとなかなか良い仕上がりになるかもしれない。が、この辺で固まるのかも知れない。

で、結論として、当初見込みどおりにお勧めすべきはAH−D1000。これは名器。

   
・と、いうわけでこの組み合わせで記念写真を一枚。

・で、これらはもう手元にはない。ある日目出度く貰われていった。(^^)






(2009年12月20日)